東京高等裁判所 昭和35年(う)1849号 判決
被告人 奥富実
〔抄 録〕
所論は、訴因の変更は刑事訴訟法第三百十二条により明らかなように、「公訴事実の同一性を害しない限度において」のみ許されるのであるが、本件起訴事実は被告人は外二名と共謀の上昭和三十四年五月三十一日の夜千代田区神田須田町一の三番地所在トミタ羅紗店々舖において鈴木金次郎管理にかかる服生地四十七点(時価計百二十六万七千二十七円相当)を窃盗したというにあるところ、原審は訴因を変更して、被告人は昭和三十四年六月一日品田義治、山田二三夫、黒田勇等から洋服生地一八六メーター(時価計三十八万余円相当)の売却方を依頼せられ、これが窃盗であることの情を知りながら、右同日午後三時頃文京区本郷元町所在木村成一方において同人及び卯月常次を介し瀬角勝重にこれを代金十万二千三百円で売却の周旋をなしもつて賍物の牙保をしたものであるとしたのであり、右窃盗と賍物牙保とを対比するに、共犯が単独犯となつたほか犯罪の日時場所、被害物品等についても大差があり、到底両者の間に公訴事実の同一性があるとはいえないから、原審には刑事訴訟法第三百十二条に違反して訴因を変更した違法があるというのである。
よつて案ずるに、本件起訴状記載の窃盗の事実及び訴因変更後の賍物牙保の事実が所論摘録の如くであることは記録上明らかである。
しかしながら、右賍物牙保の洋服生地が右窃盗の洋服生地の一部であることは記録に徴し明らかであるから、ともに同一被害者たる鈴木金次郎の管理にかかる洋服生地に対する財産罪であり、且つ犯行の日時場所も近接しているから、右窃盗と賍物故買とはその基本的事実関係を同じくし、従つて公訴事実の同一性の範囲内に属するものといわなければならない。
してみれば原審が本件起訴状記載の窃盗の訴因について賍物牙保に訴因を変更したのは正当であり、所論のような違法は存しないから、論旨は理由がない。
(長谷川 白河 関)